読書日記

読書感想文苦手を克服するために書く

東大作文 西岡壱誠

作文は「言いたいこと」=主張をひとつ決めて、そこに向かうルートを3つから選んで書く。

主張は4つのタイプに分類される。

 

•感情型(共感/理解)

•共有型(納得/理解)

•要望型(共感/変化)

•警鐘型(納得/変化)

 

まず相手に共感して欲しいのか、納得して欲しいのか、そして理解して欲しいのか、それ以上に何かして欲しいのか、で主張のタイプを選ぶ。それに沿って自分の書きたいことをいくつも列挙し、その中から主張をひとつ選ぶ。

 

主張が決まったら、それを言うためのルートを3つの型から選び、そのように書いてみる。

 

1.同格型:主張→(理由、具体例、説明)→主張

2.因果型:原因(事実、疑問提起、説明)→原因の補足(補足説明、具体例)→結果(主張)

3.対比型:対比的事実→(説明、具体例vs説明、具体例)→比較的事実→主張

 

これが言いたいことを簡潔に伝えるためのおおまかなフォーマットである。

 

 

 

 

 

七回死んだ男 西澤保彦

決して読書量は多くない私だが、評価の高い、ループもの、ミステリー、と揃えば、とりあえず読んでおきたいものである。

登場人物も多すぎず、人間関係も複雑ではなく、とても読みやすい。会社の後継者を巡る争い!ギスギス!性格悪い!まともな人間が少ねえ…といえど、胸糞悪いほどでもなく、どことなく明るい雰囲気である。ループものといえば、絶望の未来を変えなければという切迫感があるものだが、この物語では、読者も主人公もまあいざとなったら死ななかった1回目をなぞればイイジャン的な楽観があるため、コミカルですらある。それが解決した後に、実は「死ななかった1回目」ではなかったのだ、と判明するとは!さらにそれだけではなく、主人公はループの途中で実は一回死んでいたというぞぞっとするオチも良いスパイスである。程よい難易度の話で、気持ちよく、そうだったのかー!と思わせてくれた。この作者さんの他の本も読もう。

萩原編集長の山塾 実践!登山入門 萩原浩司

昨年の秋頃に自然の中をゆっくり散歩する魅力に気付き、登山に興味を持った。しかし具体的に登山とはどんな感じなのかわからなかったので、勉強と楽しみとを兼ねて「ヤマノススメ」というアニメを見た。山のゆるさも厳しさも感じられる良アニメだったと思う。春になって、近場の往復2時間程度の低山にいくつか登った。

 

この本は初心者向けの指南本だ。フルカラーで写真もたくさんあるので視覚的に理解しやすい。靴紐の結び方とか歩き方とかストックの使い方などが、1枚1枚写真で順番に説明してある。山の紹介、装備、道具、歩き方、食事、山小屋での過ごし方、テントの張り方、危機管理、山写真の撮り方など一通り書いてある。写真も綺麗なので見てて楽しい。ペンキは登山道の目印とか、レインウェアはすぐ着られるようにファスナーを開けておくとか、山道は小さな歩幅で歩くとか、知らない事が多かったので、本を読んでおいて良かった。「山と読書」というコーナーで、17冊の山の本の紹介もしてあるので、次に読む本の助けにもなる。そのうち何冊か読みたいと思う。

 

まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん

便利屋という職業は世の中の色んな人間をの生活を垣間見ることができてちょっと楽しそうだなあ、それも友人同士二人だし。などとお気楽なことを思った。

さらっと読めてさらっと終わるから物語に大事件やどんでん返しを期待するとつまらないかもしれない。私もどんでん返し系ミステリーが好きなので少し物足りなく感じたことは確かだ。

でも、読み終えて、少し味が薄かったけどまあまあ面白かったな、と。

正直、行天の行動は読んでてイラッとくることが多くて好きじゃないキャラクターだけど、不思議とこのコンビは憎めないし、最後戻ってこれて良かったと心から思えた。

ところで、196ページの「愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうこと」という言葉にとても納得感。うちのニャンチャンに私が愛情を与えてるのではなく、大好き💕と思える気持ちをネコチャーンからたくさんもらってるのね!わかる!

屍人荘の殺人 今村昌弘

ネタバレあり

 

とても面白かった!しかし少しだけがっかりした。あまりに評価が高くて期待しすぎたかもしれない。とはいえ最後まで楽しんで読んだので面白い本には違いない。

何が良いかというと、本を読みなれない人も投げ出さないで読める親切設計だ。登場人物が揃ったところで、探偵役のヒルコがそれはそれはわかりやすーくキャラクターの名前の説明をしてくれるのだ!いや、マジでミステリー小説の登場人物って覚えるの大変じゃない??普段ミステリー読んでる人ならそうでもないだろうけど。私などは覚えないまま読んじゃう。そしていつのまにか人が殺される。しかし、この小説は殺される前にみんな覚えた!それだけで超好印象!それから、トリックがまともなのも良い。きちんと考えれば導き出せる正統派。

残念なのは読者に期待させすぎる舞台を設置してしまったことだ。殺人ミステリーのトリックはよかったが、外側の設定にも壮大なトリックや何らかの仕掛けがあるもんだと期待してしまうじゃないか、あの導入だと。最後のページまで、何かあるんじゃないかと思いつつ読んだけど何もなかったがっかり感。

そして何より、ヒルコと主人公より明智と主人公の組み合わせの方が萌えるじゃんどう考えても!???最初は強引な明智のことを苦く考えてたような主人公。しかし、彼のブレーキ役だから仕方なく付き合ってる、かーらーのー、僕は彼のブレーキ役だが彼は僕のアクセル役なのだ、ですよ。こいつら…相思相愛コンビじゃん!??悲しい。つらい。

ところで、作中でゾンビがバンパイアに取って代わったって重元くんが言ったのは、確かに!と思ったし彼のゾンビウンチクは楽しめた。バンパイアだと噛まれても知性は保ったままだっけ?噛まれて仲間を増やす化け物、屍鬼、起き上がり…。ゾンビとミステリーの組み合わせで思い出した「生ける屍の死」。死から起き上がってしまった悲しいゾンビはいつからか何かの実験やらで感染した知性のないただの人を襲う装置になってしまったなあとしみじみ感じたのだった。

 

9•11ジェネレーション 米国留学中の女子高生が学んだ「戦争」 岡崎玲子

タイトルを見て、アメリカ留学の女子高生が書いた911の体験記エッセイか、と軽い気持ちで手に取った。読んでみると、アメリカまたは他国から優秀な学生が集まったエリート学校の話で、おおよそ一般的な「女子高生」のイメージとはかけ離れている内容だ。著者が通っていたのはアメリカ東部のプレップスクール(寄宿制の私立高等学校)であるチョート校だ。中学3年生の秋から通い始め、2年目の9月(アメリカでの年度始め)に911は起こった。

911直後の”「明日を迎えることができないかもしれない」という絶望感”、”「『開戦』だと報道されている」”等、当時の衝撃と本土が攻撃されたという恐怖感に包まれたアメリカの描写から始まり、第2章以降ではアメリカという国と歴史、イラク戦争をチョート校での教育を通して書かれている。

驚いたのはチョート校の教育の圧倒的なレベルの高さだ。多様性の尊重を重要視し、あらゆる出来事のディスカッションを行う。そのために研究家やジャーナリストなどの講演会で専門家の意見を聞く。受け身ではなく議論するための映画祭を開催する。提出する論文をインターネットから剽窃した場合は退学処分となる。参考文献の記し方を厳しく指導される。

ただ教科書を覚えるのではなく、書かれていことを知っているのは大前提であり、そこから自分たちで考える授業である。

アメリカ史クラスでの再現ビデオの撮影というプロジェクトが凄い。役になりきるためには数冊の伝記を読んで生い立ちや性格を掴み、演説の内容を理解するために多くの勉強が必要となる。この活動によって、ただ机に向かって勉強するよりも実感を伴った知識を得られるだろう。アメリカのトップレベルの人材はこのように生まれるのかと感嘆させられた。日本でこのレベルの勉強をできる場所はないだろう。

アメリカ史の教科書は教師ごとに自由に選べることが出来て、太平洋戦争でのアメリカの責任を強く追求している授業には驚かされた。私はそれだけで十分だとつい思ってしまうが、著者はそのような授業で自国の責任を後から追求したとしても、今の現実にそれを生かせないのなら意味がないと厳しく述べている。

まず大前提として知識を得る、それを元に意見を述べる、他者の意見を尊重する、議論する、そしてそれを現在に生かすのが大切なのだ。

私のような平凡な人間にとって、まず知識の時点で躓くが、しかしだからと言って私にはわからないからと世界から目を背けるのはよろしくないだろう。大変に刺激を受けた一冊だった。

 

 

「世界を変えた10冊の本」池上彰

この本は全10章で成り、それぞれの章で10冊の本を紹介している。「アンネの日記」「聖書」「コーラン」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」「資本論」「イスラーム原理主義の「道しるべ」」「沈黙の春」「種の起源」「雇用、利子および貨幣の一般理論」「資本主義と自由」の10冊だ。

読んだ事がある本や、読んだ事はないがどういう本かなんとなく知ってる本や、名前だけ覚えている本、初めて存在を知った本、いろいろだ。その中で印象に残った章の感想をいくつか書く。

 

第1章「アンネの日記」、これは幼い頃アンネの日記を元にした児童向けの本を読んだ記憶がある。ただ本そのものを読んだことはなかったし、読みたいと特別思ったことはなかった。私が好むのは日本人作家による最近書かれた小説、どちらかといえばミステリー小説で、外国の作品はいくら有名でも読みたいとは全然思わないのだ。ハリーポッターですら読んでいない。

しかし、この章で、いや、この本全体で強烈な印象が残った引用文がある。

 

“わたしたちがこういったもろもろの苦難に堪え抜き、やがて戦争が終わったときにも、もしまだユダヤ人が生き残っていたならば、そのときこそユダヤ人は、破滅を運命づけられた民族としてではなく、世のお手本として称揚されるでしょう。(略)そしてそのために、ただそのためにこそ、いまわたしたちは苦しまなくてはならない、そうも考えられます。わたしたちは、けっしてただのオランダ国民にも、ただのイギリス国民にも、いえ、そのかぎりでは、他のどんな国民にもなれないでしょう。わたしたちはつねにユダヤ人なのです。わたしたちはつねにユダヤ人であるしかなく、またそれを望んでもいるのです。神様はけっしてわたしたちユダヤ人を見捨てられたことはないのです。多くの時代を超えて、ユダヤ人は生きのびてきました。そのあいだずっと苦しんでこなくてはなりませんでしたが、同時にそれによって強くなることも覚えました。弱いものは狙われます。けれども強いものは生き残り、けっして負けることはないのです! “

 

等身大の可愛い少女が差別と迫害で亡くなった悲劇の話、だと思っていたが、それだけではない、歴史に名を刻んだ強い女性の姿が見えた。

ユダヤ教はバビロン虜囚などの苦難の中で生きるための信仰として生まれたと思うのだが、その精神は純粋なまま遠い未来まで受け継がれ、おそらく現代でもそうなのだろうと思わせられた。最近のイスラエルでの選挙も、おそらく多くの国民が兵役で亡くなっているにも関わらず、和平派が破れている。

池上さんは、建国されたばかりのイスラエルは「アンネの日記」のおかげで生き延びることができたと述べている。当時の世界の空気を知らない私は、本当にこの一冊の本で?と疑問に思うのだが、きちんと世界の取材や勉強をしているジャーナリストである池上さんがそう思うのならそうなのだろう。

この1章でものすごくアンネの日記を読みたくなったので池上さんは紹介が上手い。近いうちに読む。

 

第6章イスラーム原理主義の「道しるべ」。イスラーム原理主義過激派の成り立ちなどは今まで読んだ池上彰さんの本にも書いてあったが、その思想の元になるものの存在は初めて知った。

人が選挙で代表を選び、法律を制定することは神の主権を侵している無明社会であるので、世界を統一するまでイスラム教の教えに導かなければならない、というものだ。

なるほど、世界中の人が権力を求めるのをやめ、神の教えを忠実に守り生きていれば世界は平和になるかもしれないが、実際は人間は欲まみれだし、神だろうが法律だろうが守らないし、どうせ原理主義過激派の人だって権力への欲もあって武力で他人を支配してるのだなどと思ってしまった。

イスラーム原理主義の思想の元にほんの少しだけ触れても本当にそれを信じているのか疑問に思うし、結局よくわからないままだ。ただ、中東問題がわからないからニュースもよくわからない、という姿勢をやめようと思う。