読書日記

読書感想文苦手を克服するために書く

9•11ジェネレーション 米国留学中の女子高生が学んだ「戦争」 岡崎玲子

タイトルを見て、アメリカ留学の女子高生が書いた911の体験記エッセイか、と軽い気持ちで手に取った。読んでみると、アメリカまたは他国から優秀な学生が集まったエリート学校の話で、おおよそ一般的な「女子高生」のイメージとはかけ離れている内容だ。著者が通っていたのはアメリカ東部のプレップスクール(寄宿制の私立高等学校)であるチョート校だ。中学3年生の秋から通い始め、2年目の9月(アメリカでの年度始め)に911は起こった。

911直後の”「明日を迎えることができないかもしれない」という絶望感”、”「『開戦』だと報道されている」”等、当時の衝撃と本土が攻撃されたという恐怖感に包まれたアメリカの描写から始まり、第2章以降ではアメリカという国と歴史、イラク戦争をチョート校での教育を通して書かれている。

驚いたのはチョート校の教育の圧倒的なレベルの高さだ。多様性の尊重を重要視し、あらゆる出来事のディスカッションを行う。そのために研究家やジャーナリストなどの講演会で専門家の意見を聞く。受け身ではなく議論するための映画祭を開催する。提出する論文をインターネットから剽窃した場合は退学処分となる。参考文献の記し方を厳しく指導される。

ただ教科書を覚えるのではなく、書かれていことを知っているのは大前提であり、そこから自分たちで考える授業である。

アメリカ史クラスでの再現ビデオの撮影というプロジェクトが凄い。役になりきるためには数冊の伝記を読んで生い立ちや性格を掴み、演説の内容を理解するために多くの勉強が必要となる。この活動によって、ただ机に向かって勉強するよりも実感を伴った知識を得られるだろう。アメリカのトップレベルの人材はこのように生まれるのかと感嘆させられた。日本でこのレベルの勉強をできる場所はないだろう。

アメリカ史の教科書は教師ごとに自由に選べることが出来て、太平洋戦争でのアメリカの責任を強く追求している授業には驚かされた。私はそれだけで十分だとつい思ってしまうが、著者はそのような授業で自国の責任を後から追求したとしても、今の現実にそれを生かせないのなら意味がないと厳しく述べている。

まず大前提として知識を得る、それを元に意見を述べる、他者の意見を尊重する、議論する、そしてそれを現在に生かすのが大切なのだ。

私のような平凡な人間にとって、まず知識の時点で躓くが、しかしだからと言って私にはわからないからと世界から目を背けるのはよろしくないだろう。大変に刺激を受けた一冊だった。