読書日記

読書感想文苦手を克服するために書く

「世界を変えた10冊の本」池上彰

この本は全10章で成り、それぞれの章で10冊の本を紹介している。「アンネの日記」「聖書」「コーラン」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」「資本論」「イスラーム原理主義の「道しるべ」」「沈黙の春」「種の起源」「雇用、利子および貨幣の一般理論」「資本主義と自由」の10冊だ。

読んだ事がある本や、読んだ事はないがどういう本かなんとなく知ってる本や、名前だけ覚えている本、初めて存在を知った本、いろいろだ。その中で印象に残った章の感想をいくつか書く。

 

第1章「アンネの日記」、これは幼い頃アンネの日記を元にした児童向けの本を読んだ記憶がある。ただ本そのものを読んだことはなかったし、読みたいと特別思ったことはなかった。私が好むのは日本人作家による最近書かれた小説、どちらかといえばミステリー小説で、外国の作品はいくら有名でも読みたいとは全然思わないのだ。ハリーポッターですら読んでいない。

しかし、この章で、いや、この本全体で強烈な印象が残った引用文がある。

 

“わたしたちがこういったもろもろの苦難に堪え抜き、やがて戦争が終わったときにも、もしまだユダヤ人が生き残っていたならば、そのときこそユダヤ人は、破滅を運命づけられた民族としてではなく、世のお手本として称揚されるでしょう。(略)そしてそのために、ただそのためにこそ、いまわたしたちは苦しまなくてはならない、そうも考えられます。わたしたちは、けっしてただのオランダ国民にも、ただのイギリス国民にも、いえ、そのかぎりでは、他のどんな国民にもなれないでしょう。わたしたちはつねにユダヤ人なのです。わたしたちはつねにユダヤ人であるしかなく、またそれを望んでもいるのです。神様はけっしてわたしたちユダヤ人を見捨てられたことはないのです。多くの時代を超えて、ユダヤ人は生きのびてきました。そのあいだずっと苦しんでこなくてはなりませんでしたが、同時にそれによって強くなることも覚えました。弱いものは狙われます。けれども強いものは生き残り、けっして負けることはないのです! “

 

等身大の可愛い少女が差別と迫害で亡くなった悲劇の話、だと思っていたが、それだけではない、歴史に名を刻んだ強い女性の姿が見えた。

ユダヤ教はバビロン虜囚などの苦難の中で生きるための信仰として生まれたと思うのだが、その精神は純粋なまま遠い未来まで受け継がれ、おそらく現代でもそうなのだろうと思わせられた。最近のイスラエルでの選挙も、おそらく多くの国民が兵役で亡くなっているにも関わらず、和平派が破れている。

池上さんは、建国されたばかりのイスラエルは「アンネの日記」のおかげで生き延びることができたと述べている。当時の世界の空気を知らない私は、本当にこの一冊の本で?と疑問に思うのだが、きちんと世界の取材や勉強をしているジャーナリストである池上さんがそう思うのならそうなのだろう。

この1章でものすごくアンネの日記を読みたくなったので池上さんは紹介が上手い。近いうちに読む。

 

第6章イスラーム原理主義の「道しるべ」。イスラーム原理主義過激派の成り立ちなどは今まで読んだ池上彰さんの本にも書いてあったが、その思想の元になるものの存在は初めて知った。

人が選挙で代表を選び、法律を制定することは神の主権を侵している無明社会であるので、世界を統一するまでイスラム教の教えに導かなければならない、というものだ。

なるほど、世界中の人が権力を求めるのをやめ、神の教えを忠実に守り生きていれば世界は平和になるかもしれないが、実際は人間は欲まみれだし、神だろうが法律だろうが守らないし、どうせ原理主義過激派の人だって権力への欲もあって武力で他人を支配してるのだなどと思ってしまった。

イスラーム原理主義の思想の元にほんの少しだけ触れても本当にそれを信じているのか疑問に思うし、結局よくわからないままだ。ただ、中東問題がわからないからニュースもよくわからない、という姿勢をやめようと思う。